デッドニングDIY派の参考書(第2回)エンクロージャーの解説!
ウーファーの音の出どころ。いる音、いらない音
ウーファーを交換した事がある人は経験した事があるかも知れないが、ドアに取る付ける前にテストして鳴らした音と、ドアに組み込んでから鳴らした音では違いがある。
もちろん後者のほうが良い音がする。
ここにデッドニングの原点がある。
ウーファーの音の出どころは3種類ある
ウーファーはコーンの表だけから音が出ていると思っていないだろうか。
実は大きく分けて3種類の音を出している。
1)ウーファーコーンの表から出る音
これこそが私たちが聞きたい音であり、純粋に必要な音源である。
ただし後述の別の音源に干渉されて音の劣化を生む。
2)ウーファーコーンの裏から出る音
コイツが諸悪の根源(笑)
通常は全く要らない音源。しかし表側とほぼ同等の音を裏側でまき散らしている。
しかも逆位相で。理論上では表と裏の音がぶつかり合えば、打ち消し合ってエネルギーは0になってしまう。
よってなんらかの対策が必要だ。取り付けを含めて話はエンクロージャーに発展する。
3)ウーファーユニット躯体から出る音
ウーファーが音を出す時にどうしてもユニット自体も振動してしまう。この場合の振動とは結果的に音とイコールである。
高額なウーファーほど、躯体(振動対策)にもお金を掛けている。
ウーファーユニットを車のドアに取り付けする場合、しっかりとしたバッフルを使用し、取り付けのインナーパネルは制振加工を施す。
後に詳しく説明するが、デッドニングの最重要課題の1つである。
【超重要】エンクロージャーの解説
エンクロージャーってなに?
エンクロージャーとは「機械類を取り付ける躯体であり、囲い込むモノ」である。
特にウーファーボックスの別名として使われる事が多い。
エンクロージャーの基本形は平面バッフル型だ。
簡単にいえば一枚の板である。その板は理論的には無限大に大きい方がよい。
理由は裏側で発せられた音を表側に回り込ませないためだ。
しかし面積に制限がある事は当然であって、「じゃあ、囲ってしまいましょう!」って事で箱型に発展する。
まず背面に板のない後面開放型(ダイポール型)がある。
エンクロージャーの奥行や設置場所に左右されるが、雑味のないスピーカー本来の音がする。
ある意味理想形なのかもしれない。
さらに扱いやすさを考慮して、背面にも蓋をしてボックス型が出来上がる。
密閉型やバスレフ型が代表的なところだ。
通常のホームオーディオ用に至っては、当然スピーカーに対して容積計算や材質・強度の選定がなされている。
それに対してカーオーディオはどうだろうか?
わずか1mm未満の薄い鉄製の大穴だらけのインナーパネルに無造作に取り付けられているだけである。
それなのに何故かみんな(プロも含めて)デッドニングをするとなると、すぐに密閉性のエンクロージャーをイメージし過ぎるんだな。
エンクロージャーは密閉である必要が必須ではない。
車のドアがエンクロージャーとして劣悪極まりない理由
さて今までエンクロージャーの話を長々してきたが、今後の展開には必要なので勘弁してほしい。
やっとここからが本番だ。
まずどうして車のドアがエンクロージャーとして良くないのかを考えてみよう。
おのずとその改善策こそが、正しいデッドニングそのものなのだから!
1)車のドアパネルは鋼板で出来ている
車のドアパネルとは外板であるアウターパネルと骨格をささえる内側のインナーパネル、そしてガラスを支えるサッシでおおむね構成されている。
ほぼプレスされた鋼板を溶接して出来ているといっていいだろう。
鋼板自体振動しやすく、固体伝搬音も走りやすい。
この辺のメカニズムは下記のページで解説しているので参考にして欲しい。
例えばクラシックギターが木材ではなく鋼板で出来ていたら、音はよく鳴るだろうがもの凄い響き方がするんだろうね!
2)インナーパネルに大きなサービスホールがある。
このサービスホールは、ウインドガラスやウインドレギュレーター(昇降装置)を組み込んだり、脱着するために開いている。ビニールシートをブチルゴムで接着してある事が多い。
最近の良い車はプラスティック製の蓋が付いてる事もある。
これがエンクロージャーとして機能しない理由のひとつだ。
3)ウーファー背面とアウターパネルの位置が近すぎる
ドアの厚みはデザイン上で決まってしまうために、音響の要素は全く考慮されていない。
上記のエンクロージャーの解説で後面開放型に触れたが、その理想からあまりに真逆である。
また鋼板は質量則から音を極めて跳ね返しやすい。
質量則については下記のページで解説していますよ。
ウーファーの背面すぐ近くに鋼板(アウターパネル)があるなんて、これはもう致命的な欠点だ。
こればかりは解決しようがない。結局気休めの策しかないのが現状だ。
もしウーファー背面のアウターパネルに大きな穴を開けられて逆位相の音を外に逃がせれば、きっと素晴らしい音が室内には鳴るのだろう!
今回のまとめ
上記3点の改善策こそが、デッドニングの基本である。
今後は遮音・制振・吸音など具体的な内容を盛り込みながら話を進めていきたい。
あまりに劣悪な環境のフロントドアを少しでもまっとうなエンクロージャーに仕立てていくのが仕事である。
しかしそれは密閉式のエンクロージャーを意味するものではない。
車ののドアを密閉式のエンクロージャーにする事など不可能だ。
圧力と言うものは均一に掛かり正直だからね。
ウェブ上でよく見かける「密閉しなければいけない!」に騙されてはいけない。
酷いショップになると「密閉しないとスピーカーに背圧が掛からず抜けて締まりのない音になってしまう!」とか「パッシブラジエーターが・・・」なんて聞きかじった事をもっともらしく書いているのには閉口する。
そんな話はきちっと容積計算された質の良いエンクロージャーならでは話。
少なくともドアウーファーでエアサスペンションを必要とする製品は存在しない。
余談になるが、ホームオーディオから派生してきたショップさんなどは知識と技術力が素晴らしいところが多い。
反対に「これなら出来そう!」と参入しているショップが多いのも事実。
自動車業界の中で、これほど技術力に開きがある業種も珍しい。
だからこそ、しっかりとした基礎を身に着けてDIYで挑戦してもらいたいんだ!
デッドニングはDIYで十分というのが本音だね。
続きはこちらからどうぞ!
デッドニングで求める低音についてです。
今回はこれにて終了
お疲れ様でした!
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