デッドニングDIY派の参考書(第3回)低音を求めてはダメ?
「デッドニングをすると音が良くなる!」は本当か
何度も確認するが、この場合のデッドニングとは、フロントドアに取り付けられたウーファー(スピーカー)の音質改善のために施す仕事の事を意味する。
ドアチューニングと言った方が、スマートで的を得ているのだが・・・。
さて素朴な疑問であるデッドニングの成果、はたして本当に音は良くなるのか?
やらないよりは音は改善されるが、「音が良くなる」はほめ過ぎで、「少しはマシな音が出るようになる。」と表現したほうが、正しいだろう。
だいたいデッドニングに過大は期待を寄せている人(ショップを含めて)が多すぎるのが気になる。
デッドニングとはドアウーファーの能力を増大させる追加魔法ではなく、チカラを制限されているウーファーにすこしでも本来のチカラを出せるように助ける補助魔法(回復魔法)なのだから。
デッドニングを施したドアウーファーに何をもとめるのか?
デッドニングで低音を求めるのは大きな間違い!
もし隼人さんがカーオーディオショップをやったとして、デッドニングの注文を受けたなら、お客様にこんな質問をしてみたい。
「デッドニングをして何を求めるんですか?」・・・と。
きっといろいろな答えが返って来るだろう。
「デッドニングをすれば音が良くなると聞いたから。」
「車のなかで、出来るだけいい音で聞きたいから。」
上の様な漠然としたイメージでショップを訪れるお客様には、きちっと説明をして、プロとしての仕事でお答えすればよいだろう。
現状の音響システムや予算、今後のシステムアップなどを話し合いながらメニューは決まってくる。
しかし次の質問はやっかいだが、実はツボにハマる。
「デッドニングをして、もっと低音が出るようにしたい!」
今回このデッドニング注文を最後に現状のカーオーディオシステムを完成させると言うのであれば、オーダー通りの仕事をこなす事はできる。
デッドニングを施し低音を改善させる事は可能だからだ。
しかしデッドニングにお金を掛ける様な人が、この程度の音響システムで満足していいの?
このページに辿り着かれて読まれている諸兄は、多少なりとも音響の知識があり、愛車で出来るだけ良い音を聞きたいという願望があるはず。
更に上の世界を目指して頂きたい!
この更に上の世界ではドアウーファーで低音を鳴らすのは、明らかな間違いなのである。
さて次の展開に入る前にデッドニングによって低音が改善されるメカニズムを説明してしまおう。
デッドニングで低音が改善される理由
前回のエンクロージャーの話を読んでいただく必要があるがあるので、読んでいない方は下記のページから!
フロントドアウーファーはフロントドアをエンクロージャーに見立てる訳だが、ウーフアー自体はフロントドアのインナーパネルに固定されている。
よってほとんどの車種の場合、残念ながら内張内に音が解放されている。
一方、ウーファーコーン裏側から解放された逆位相の音はドア本体内部(インナーパネルとアウターパネルの間)で暴れまわる。
一番やっかいなのは低音域の音でインナーパネルは容易に突き抜けるし、音の指向性が無いため回折(回り込み)しやすい。
だからインナーパネルにあるサービスホールなどから表側(インナーパネルと内張の間)に回り込んで、表側の正規の音と低音域ほど干渉し打ち消し合ってしまう為である。
エンクロージャーアウターバッフルは無限大が理想である概念と全く一致する説明でしょ!
これもデッドニングの最重要課題のひとつであって、後々詳しく施工説明するがインナーパネルに隔壁を完成させる。
よくドアウーファーの外周にスポンジを巻くでしょ。あれもこの対策のひとつだ。もっとも気休め程度の効果しかないけど・・・。
最良の改善策は一部のショップでやっている内張(インナートリム)をくり抜いてMDF材で筒を製作し、ウーファー表面の音を直接室内に解放する手法。
ほぼ完全に逆位相の音の干渉を抑えられるが、手間とコストがとんでもない・・・。
このような音の特性をもっと詳しく知りたい方は下記のページで解説しています。
ドアウーファーに低音を求めない理由
上の方でドアウーファーで低音を鳴らすのは間違い!と書きましたが、その説明に入りましょう。
まずあなたの車のスピーカーはどの様な配置でついているのでしょうか。
ダッシュパネルの左右両奥、フロントガラス付近もしくはフロントピーラーあたりに高音を担当するツイーターが、フロントドア足元付近にドアウーファーが、そしてリアドア下付近にウーファーが付いていると思いマス。
だいたいこの6スピーカーが基本でしょう。
まさかデッドニングを気にするような人がリヤドアスピーカーを鳴らしていないでしょうね?
音場が崩れますからね、すぐに音量をゼロにしましょう!
さて通常は前方のツイーターとフロントドアウーファーの2ウエーで音場を構成するわけですが、この場合ツイーターは高音域を担当し、フロントドアウーファーは大体フルレンジで音が鳴ってます。
カーオーディオが更に高度になってくると、音域をスピーカーによって使い分けるんですネ。
スピーカーに得意な周波数帯だけを担当させ、音質の更なる改善を図ります。逆に言えば、苦手な周波数帯の排除です。
フロントウーファーにはローパスフィルターをかけ高音をカットし、ハイパスフィルターをかけ低音をカットします。
高音はツイーターに担当させます。(ハイパスフィルターをかける)
低音はサブウーファーに担当させます。(ローパスフィルターをかける)
要するに最初からドアウーファーは高音と低音が苦手なんですね。
だからデッドニングによって無理に低音を出そうとしたり、望むこと自体がスマートではないのです。
低音域はサブウーファーに任せるのがベスト
カーオーディオに興味があったり良い音で聞きたいと望む人が多い割に装着率が低いのが、サブウーフアーでしょう。
装着率の悪い理由として、費用が掛かる、場所がない、純正ナビからは接続しづらい、イメージが悪い!といったところでしょうか。
サブウーファーの良さ、必要性は別の記事でたっぷり解説するとして、今回言いたい事はフロントドアにデッドニングを施して低音の改善に成功しても、それでも本物のサブウーファーが再現する低音には足元にも及ばない!と言う現実です。
(サブウーファーの記事も書き始めました。下記からどうぞ!)
あるショップのページには、「うちでデッドニングすればサブウーファーを付けるより低音がでる!」なんて堂々と書いてました。
唖然としましたね・・・。
この人はサブウーファーを付けた音を聞いたことのない偽物か、感性がとんでもなく鈍いです。
まっとうなショップさんならば、高度なオーダーを要求されれば、100%ドアウーファーにはハイパスをかけ、サブウーフアーの追加を選択するでしょうから!
今回のまとめ
ドアウーファー主流の17cmは苦肉の策?
現状、各音響メーカーの主力商品は17cmのウーファーサイズだが、出来るだけ低音を出すための苦肉のサイズだと隼人さんは思っている。
確実にサブウーファーを追加できる環境ならば、ドアウーファーのサイズはもう少し小さいサイズの方が望ましいと思う。13~15cm位が理想なのだが。
何を言いたいかといえば、コーンは低音域を再生する外側ほど歪む。最初から50㎐以下を必要としなければ、更に再生の精度が上がることは明白だ。
だからドアウーファーには低音域は期待せず、「すこしでも低音域をカットして楽をさせてあげたい!」と思うのが正しい考え方だと思う。
デッドニングの方向性
これまで書いてきた事はデッドニングを否定しているのではない。
ドアウーファーに低音を求めると、本来良い音で聞こうと言う理念の元にデッドニングを行ったはずなのに結果が違ってしまいますよ!と言う事が言いたかったのである。
ここまで読んで如何でしたか?
音の性質をよく理解してそれに対応すれば、デッドニングは難しいモノではなく、DIYでも十分に成果を上げられるでしょう。
少しはイメージが膨らんで来たでしょうか!?
次回は具体的な施工例にはいれるかな?
今回はこれにて終了。
お疲れさまでした!
ディスカッション
コメント一覧
ロードノイズ対策、デッドニングと楽しく読ませていただいております。
隼人さんの豊富な知識、解りやすい説明、車のDIY初心者の私にとって大変ありがたいです。
しかしながらデッドニングについての解説がこの第三回で止まってしまっているのが残念です。
実際の施工例を楽しみにしていたのですが…。
お忙しいとは思いますが続編期待しております。
katsu様
コメントして頂きありがとうございます。
ほんとに記事のアップが遅くて申し訳ない・・・。
デットニング作業状況は、愛車C-HRのフロントドアウーファー交換とネットワークモード化でやる予定なんですが・・・。
長い目で、お願い致します!(汗)
今後も読み物として面白い記事を心掛けますので、宜しくお願い致します。
暖かくなるのを待ってデッドニングを、と思いながら復習を兼ねて取り溜めていた記事を見直していたら、嬉しいことに隼人さんから返信が来てる!
気が付くのが遅くてごめんなさい。お忙しいのにありがとうございます。
はい、なが~い目で楽しみにして待っていますね。
まだまだ寒い日が続きます。お体ご自愛下さい。